book

語りに託すもの――コニー・ウィリス『航路』について

遅ればせながら『航路』を読み、第三章の語りについてつらつらと考えている。 『航路』は青背だから、多分ハヤカワ的にはSFとして売りたいんだろう。コニー・ウィリス、SF作家だし。ただ本作に関していうなら、非実在ガジェットはCTスキャンを超パワー…

RPG世界ドーナツ説とテッド・チャン「バビロンの塔」(『あなたの人生の物語』収録)

RPG世界ドーナツ説とは、RPGでのワールドマップを用いた移動システムで生じる違和感、それを論理的に解決するものである。 RPGの中で、ワールドマップを横方向に進み、端に辿り着いた次の瞬間、反対側にいる。これは地球の世界地図と同じだし、しっくりくる…

私の一世紀(ギュンター・グラス)

気付いたら半年も放置してて赤面。さて、ついったと読書メーターで自分のアウトプット欲は満足できてるなあという感じなんだけど、140字じゃ表現できない情熱というのもこの世にはある! ので、そんな感じで使用っていきたいと改めて思ったりなかったり。前…

汚れた7人(リチャード・スターク)

汚れた7人 (角川文庫)作者: リチャード・スターク,小菅正夫出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/09/25メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (10件) を見るジェイムズ・ウェストレイクが死んでしまったので、彼が別名義で…

ハヤカワ文庫SFで短編集が占める割合の変化について

ハヤカワ文庫SF(SF文庫とばかり言っていたが、どうやら逆が正式らしい)の1001番以降をチェックする機会があって、少し気付いたことがある。 「アンソロジーが出ていない」。 いや、正確を期すなら「1001番以降、シルヴァーバーグ編集の『SFの殿堂 遥かなる…

イルーニュの巨人(クラーク・アシュトン・スミス)

イルーニュの巨人 (創元推理文庫)作者: C.A.スミス,井辻朱美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1986/07メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 13回この商品を含むブログ (16件) を見る復刊フェア対象作。C・A・スミスの作品でかつて自分の読んだのは、「暗黒…

20世紀の幽霊たち(ジョー・ヒル)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)作者: ジョーヒル,Joe Hill,白石朗,安野玲,玉木亨,大森望出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/09/05メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 48回この商品を含むブログ (96件) を見る S.キング 本書の感想めいたものを書く前に、…

秘密機関長の手記(ヴァルター・シェレンベルク)

秘密機関長の手記 (1960年)作者: シェレンベルグ,大久保和郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1960メディア: ? クリック: 14回この商品を含むブログ (1件) を見るナチスドイツ親衛隊少将にして国家保安本部第六局(国外諜報担当)の長を務めた、ヴァルター…

普通に面白かった『四十七人目の男(スティーヴン・ハンター)』と、ヤングチャンピオンの素晴らしさについて

四十七人目の男〈上〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-14)作者: スティーヴン・ハンター,公手成幸出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2008/06/28メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (28件) を見る国辱って何? 俺ァ坊ちゃんじゃねえから全然…

吉里吉里人について

そろそろ吉里吉里人読んどかなくちゃなあ、と思った。 そもそも吉里吉里人なんで知ったかというと国語教師の脱線in中学時代。今でも覚えてるのは「東北の寒村が日本から独立する」「きんかくしに金が隠してある」程度のことだけど。 じゃあなんで今になって…

ハートシェイプト・ボックス(ジョー・ヒル)

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕作者: ジョーヒル,Joe Hill,白石朗出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/12/04メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ (26件) を見るさてこの本について語るべきことはたくさんあるような気が…

不気味で素朴な囲われた世界(西尾維新)

昨日は西尾維新を読みました。不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)作者: 西尾維新,TAGRO出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/10メディア: 新書購入: 5人 クリック: 120回この商品を含むブログ (218件) を見る読者みんな初期戯言初期戯言うるさ…

最後の一壜(スタンリイ・エリン)

今日は図書館に行きました。年始休業明けで凄い行列。最後の一壜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: スタンリイエリン,仁賀克雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2005/01/14メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (26件) を見るスタンリイ・…

激突カンフーファイター(清水良英)

今日はライトノベルを読みました。激突カンフーファイター (富士見ファンタジア文庫)作者: 清水良英,しろー大野出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2001/01メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を含むブログ (15件) を見る本書を何に例えよう。 マシンガン…

爆発星雲の伝説(ブライアン・オールディス)

そして今日はオールディスの短編集を読みました。爆発星雲の伝説 (ハヤカワ文庫 SF 364)作者: ブライアン W.オールディス,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1979/10メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る表題作、ペテン師…

ようこそ女たちの王国へ(ウェン・スペンサー)

昨日は問題作を読みました。ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)作者: ウェンスペンサー,エナミカツミ,赤尾秀子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/10/24メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 202回この商品を含むブログ (47件) を見る男女比がいち…

弁護士は奇策で勝負する(D・ローゼンフェルト)

弁護士は奇策で勝負する (文春文庫)作者: デーヴィッド・ローゼンフェルト,白石朗出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/04/07メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (11件) を見る今日は法廷ミステリを読みました。悪くない出来。この種のもの…

千の脚を持つ男(編:中村融)

千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 (創元推理文庫)作者: 中村融出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/09/22メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (29件) を見るアンソロジーをおもちゃ箱に例えるのはもはや定石を通り越して陳腐だ…

鉄球姫エミリー(八薙玉造)

鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)作者: 八薙玉造,瀬之本久史出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/09/25メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (81件) を見る川上稔に似てるよと言われて、下ギャグと…

スターダスト(ニール・ゲイマン)

スターダスト (角川文庫)作者: ニールゲイマン,Neil Gaiman,金原瑞人,野沢佳織出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/09/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (20件) を見るワールドコン行ったとき、展示ホールで映画の宣伝してた…

近況

最近読んだやつ。 激突!(リチャード・マシスン) 解説で「『消えた少女』は導入こそすばらしいものの展開にがっかり」とあって笑った。内容は普通。 ハバナの男たち(S.ハンター) ボブ・リーのスナイパー人生の始まり。そして殺人を決意するまでのメンタ…

ボブ・リー・スワガー、日本に来る!?

なんか久しぶりにスワガーサーガ読みたくなったなあ。と思い、本預け所(ブックオフともいう)に行って適当に『狩りのとき』と『ハバナの男たち』買ってきました。そういえば『ハバナの男たち』はまだ読んでいなかったのだった。そして最近S.ハンターは何…

輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6) (ハヤカワ文庫SF)(ジェイムズ・ティプトリー・Jr)

本開いたらいきなり舞台となるホステルの見取り図があって笑う。何これ本格ミステリ?しかし実のところ、それを抜いても本格っぽいのは確かだったのだ! 舞台の惑星に秘められた、血塗られた過去 そこで起こる前代未聞の天体ショー 惑星の管理官三人と、やっ…

アルベマス(フィリップ・K・ディック)

アルベマス (創元SF文庫)作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,大瀧啓裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1995/04メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見るさて。この『アルベマス』の主人公は「SF作家フィリッ…

『WATCHMEN』映画化について

最近観た映画が三本とも原作つきだったせいか、『300』のザック・スナイダーに『ウォッチメン』はどう映画化されるのかということばかり考えている。かの作品のストーリーは冷戦構造があってこそであるため、時代設定や背景などそのまま映画化するのは恐らく…