語りに託すもの――コニー・ウィリス『航路』について

遅ればせながら『航路』を読み、第三章の語りについてつらつらと考えている。 『航路』は青背だから、多分ハヤカワ的にはSFとして売りたいんだろう。コニー・ウィリス、SF作家だし。ただ本作に関していうなら、非実在ガジェットはCTスキャンを超パワー…

RPG世界ドーナツ説とテッド・チャン「バビロンの塔」(『あなたの人生の物語』収録)

RPG世界ドーナツ説とは、RPGでのワールドマップを用いた移動システムで生じる違和感、それを論理的に解決するものである。 RPGの中で、ワールドマップを横方向に進み、端に辿り着いた次の瞬間、反対側にいる。これは地球の世界地図と同じだし、しっくりくる…

Superman: Red Son

Superman: Red Son作者: Mark Millar,Dave Johnson,Kilian Plunkett出版社/メーカー: DC Comics発売日: 2004/02/01メディア: ペーパーバック購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ (6件) を見る 川の流れを変え、鉄の棒を素手で曲げられる異世界から…

私の一世紀(ギュンター・グラス)

気付いたら半年も放置してて赤面。さて、ついったと読書メーターで自分のアウトプット欲は満足できてるなあという感じなんだけど、140字じゃ表現できない情熱というのもこの世にはある! ので、そんな感じで使用っていきたいと改めて思ったりなかったり。前…

フェイクシティ ある男のルール

ジェイムズ・エルロイが脚本だったことを知ったので(via: http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20090213)、先週の金曜観に行った。 話の筋などは置いて、中盤「ジム・トンプスンの『おれの中の殺し屋』っぽいなー」と感じた。というのは、『おれの中の殺し屋…

汚れた7人(リチャード・スターク)

汚れた7人 (角川文庫)作者: リチャード・スターク,小菅正夫出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/09/25メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (10件) を見るジェイムズ・ウェストレイクが死んでしまったので、彼が別名義で…

民族の祭典/美の祭典

民族の祭典 ()" title="DVD>民族の祭典 ()">DVD>民族の祭典 ()出版社/メーカー: コスミック出版発売日: 2008/05/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 23回この商品を含むブログ (5件) を見るベルリンオリンピックの記録映画。買ったのは二本合わせて千円…

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ハヤカワ文庫SFで短編集が占める割合の変化について

ハヤカワ文庫SF(SF文庫とばかり言っていたが、どうやら逆が正式らしい)の1001番以降をチェックする機会があって、少し気付いたことがある。 「アンソロジーが出ていない」。 いや、正確を期すなら「1001番以降、シルヴァーバーグ編集の『SFの殿堂 遥かなる…

本を読むということ

いろんな人とガーッと喋ったりしている間になんとなく気がついたことがあって、本当はそこまでにいたった経路をまとめたり論証したりが必要なんだろうけど、文を書くのは苦手なので(ここも放置しがちだし)気付いたそのことを先に書いてしまうことにする。 …

イルーニュの巨人(クラーク・アシュトン・スミス)

イルーニュの巨人 (創元推理文庫)作者: C.A.スミス,井辻朱美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1986/07メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 13回この商品を含むブログ (16件) を見る復刊フェア対象作。C・A・スミスの作品でかつて自分の読んだのは、「暗黒…

Superman Batman: Absolute Power

Superman/Batman: Absolute Power - Volume 3 (Superman Batman)作者: Jeph Loeb出版社/メーカー: DC Comics発売日: 2005/07/30メディア: ハードカバー クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見る あらすじ: 悪い未来人その1が地球に不時着した直後…

タイトル変えた。これでもう鶏ひき肉のレシピを求めやってくる人に申し訳なさを感じることはないはず。

20世紀の幽霊たち(ジョー・ヒル)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)作者: ジョーヒル,Joe Hill,白石朗,安野玲,玉木亨,大森望出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/09/05メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 48回この商品を含むブログ (96件) を見る S.キング 本書の感想めいたものを書く前に、…

僕らのミライへ逆回転

http://www.gyakukaiten.jp/ あらすじ:さびれた町パセーイクのビデオ屋店員ジェリーとその悪友マイク。ある日マイクが発電所の電気を浴びて磁気人間になり、店のビデオテープがすべて消去されてしまう。折も折、常連のおばちゃんが『ゴースト・バスターズ』…

秘密機関長の手記(ヴァルター・シェレンベルク)

秘密機関長の手記 (1960年)作者: シェレンベルグ,大久保和郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1960メディア: ? クリック: 14回この商品を含むブログ (1件) を見るナチスドイツ親衛隊少将にして国家保安本部第六局(国外諜報担当)の長を務めた、ヴァルター…

感想:片腕マシンガール

「『プラネット・テラー』って映画観たことある? 俺っち観てないケド、そんなカンジ」 流行に取り残されてはいけないと思い、ぼくもみんな大好き『片腕マシンガール』を観てみました 行った映画館は名古屋の映画館シネマスコーレ、若松孝二がオーナーなこと…

『宇宙船レッドドワーフ号』とわたくし

今日は『宇宙船レッドドワーフ号』についてしゃべくろうと思います。

普通に面白かった『四十七人目の男(スティーヴン・ハンター)』と、ヤングチャンピオンの素晴らしさについて

四十七人目の男〈上〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-14)作者: スティーヴン・ハンター,公手成幸出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2008/06/28メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (28件) を見る国辱って何? 俺ァ坊ちゃんじゃねえから全然…

インクレディブル・ハルク

2003年のアン・リー版『ハルク』の失敗から反省をしたのか、一新してアクション多めなハルク映画のお出ましである。 なんといっても「先週のあらすじ」とばかりに開始五分でガンマ線照射実験と変身を軽くこなし、ブラジルのスラム街へ潜伏してしまうのだから…

『ウォンテッド』原作がかなり出来のいいメタフィクションな件

最近映画館によく行っている。『クローバーフィールド』と『ミスト』をハシゴしたせいで夢に触手が出てきたり、ついに公開されたパワードスーツに興奮してみたり。なかでも面白いのが本編観る前の予告編。変な映画の変さやエモエモしい映画のエモさはすべて…

面白げな新刊

http://dccomics.com/comics/?cm=9774 第二次世界大戦のイフもの。マンハッタン計画の失敗によりアメリカ政府はプロジェクト・オリンポス――日本本土への上陸作戦を実行することになる。 ちょこっと試し読みができるので読んでみたけど、開始五ページで「将軍…

サラエボの花

観てきました。ちょっとこれは感想書くのに時間かかりそうだ。 米沢穂信の『さよなら妖精』と重なるところがいくらかある、というとさすがに我田引水的なところがあるか。具体的な共通点って「真実の秘匿」と「悲劇的な暴露」ぐらいだし。あと「気付いたとき…

吉里吉里人について

そろそろ吉里吉里人読んどかなくちゃなあ、と思った。 そもそも吉里吉里人なんで知ったかというと国語教師の脱線in中学時代。今でも覚えてるのは「東北の寒村が日本から独立する」「きんかくしに金が隠してある」程度のことだけど。 じゃあなんで今になって…

サークルの経営について、アドバイスと覚書

いよいよ各大学も二次試験がたけなわになってきました。ちょっとまだ入学式には早いですが、今頑張り中の、そしてもう頑張り終わった皆さんに大学生活における、その何だ。アドバイス的な何かを捧げたいと思います。 とはいっても僕が伝えられるのは、それな…

ハートシェイプト・ボックス(ジョー・ヒル)

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕作者: ジョーヒル,Joe Hill,白石朗出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/12/04メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ (26件) を見るさてこの本について語るべきことはたくさんあるような気が…

オタクの向学心とか、そういうことについて。

なんか最近オタク(もしくはそう呼ばれてるもの)に向学心ライクな何かがないって話がたまにあるじゃん。具体的には元ネタ探索をしないとか作家読みをしないとか。まー確かにそれはまわり見て同じこと思うよ。けどそれは情報を取捨選択しきった上でそういう…

寒すぎて自分が風邪引いてるのかすら分かりませんでした。ズボン重ねてはいたのは久しぶりだなあ。

蜘蛛の巣のなかへ(トマス・H・クック)

今日はトマス・H・クックを読みました。蜘蛛の巣のなかへ (文春文庫)作者: トマス・H・クック,村松潔出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/09/02メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見るさて、トマス・H・クック。へこみ系ミステ…

奇術師の密室(リチャード・マシスン)

奇術師の密室 (扶桑社ミステリー)作者: リチャードマシスン,Richard Matheson,本間有出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2006/07メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (47件) を見る植物状態の元・奇術師が、この小説の語り手である。 彼…