ハートシェイプト・ボックス(ジョー・ヒル)

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕

さてこの本について語るべきことはたくさんあるような気がする。タイトルがニルヴァーナの名曲から取られているとか、そもそもロックネタが異様に多いとか、作者はスティーブン・キングの息子であるとか、そこで出てくる父との類似点・相違点とか、冒頭の引用がアラン・ムーアの小説からだとか。

もちろんそれは枝葉末節で本筋に比べればどうでもいいことだ。これは再生の物語である。幽霊に取り憑かれた自堕落な元ロック・スターが、逃避行と解決策探しをするにつれ救済されていく。ホラー小説であるが、父の書いたような(できれば比較はしたくないのだけれど)モダンな恐怖かというとどうもそうではない。ゴア表現やいわゆる論理的な幽霊撃退法とはほとんど無縁である(といっても、幽霊を追い払うのに使った策として「新曲のメロディのことを考える」というのがあり、クーンツの『ウィンター・ムーン』やフリッツ・ライバーの「歴戦の勇士」を思い出したが、あそこまでしつこくはない)。しかし登場する幽霊古臭いな。レファニュあたりに出てきてもおかしくないぐらいだ。


枝葉の方だって気になるのが人情というものなのでキングの話も少し。
いやーこないだ『回想のビュイック8』読んだんだけど、何あれ。みんな「どっちかというとグリーン・マイル系」とか言ってるけどまるっきり『トミー・ノッカーズ』じゃん。というかむしろトミー以下略からカタルシスと変態さを抜き出した感じ、ってそれ何が残ってるんだよ。あと『ドリームキャッチャー』も『IT』と『トミーノッカーズ』足して5で割った感じだよね。それはともかくとして無理やり『ハートシェイプト・ボックス』に似たキング作品を挙げるとするなら、『IT』『ローズ・マダー』「道路ウイルスは北へ向かう」。どちらかというと999収録の「妖女たち」(エリック・ヴァン・ラストベーダー)とかに近いような気もする。


なんか物凄く忙しくなる予感がする。前門のシュウカツ、後門のソツロンっていう。