イルーニュの巨人(クラーク・アシュトン・スミス)

イルーニュの巨人 (創元推理文庫)

イルーニュの巨人 (創元推理文庫)

復刊フェア対象作。C・A・スミスの作品でかつて自分の読んだのは、「暗黒神話大系」シリーズ収録作やアンソロジー『影が行く』の「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」ぐらい。ルリム・シャイコースが出てくるやつは未読、というか国書のアレをあまり読んでない。
それらの作品を読んで感じたのは、ホラーとファンタジーとSFがまだ未分化だった頃のにおいが強くあるってことで、例えるなら理屈を引いてユーモアを足したエドガー・アラン・ポオ。ネタや舞台が無意味にSFテイストな「七つの呪い」「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」、爆笑できるエイボンとモルギの珍道中、「ウボ=サスラ」の視覚的に書かれた気持ち悪さなどが心に残っている。
というわけで本書『イルーニュの巨人』だが、基本的にそういったこれまでの印象を変えるものではない。が、それなりに面白い短編はいくつかある。ホラー作品では「アヴェロワーニュの獣」「氷の魔物」、非ホラーでは「柳のある風景」「ユーヴォラン王の船旅」などなかなか楽しく読めた。ワンアイデアな話が多くあるのも、短編集として特徴的だろう。上記以外の一押しは「聖人アゼダラク」「シレールの女魔法使い」で、時間を巻き戻す薬や真実の姿を映し出す鏡などのマジックアイテムが効果的に使われている。


他の復刊フェア対象作、『大宇宙の少年』『ドリーム・マシン』『毒薬ミステリ傑作選』なんかも、機会があればぜひ読みたい。