Superman: Red Son

Superman: Red Son

Superman: Red Son

川の流れを変え、鉄の棒を素手で曲げられる異世界からの奇妙な訪問者が、労働者のチャンピオンとして、スターリン社会主義のため、さらにはワルシャワ条約機構の拡張のため終わりなき戦いを戦う!! (裏表紙より)

ウォンテッドとかのライター、マーク・ミラーどん(キックアス気になりますね!)の書いたスーパーマンWhat-Ifもの。故郷の滅んでしまったクリプトン星人スーパーマンは、"Red Son"ではアメリカの片田舎ではなくソビエトで育っていくことになる。ので胸にはSマークじゃなく鎌とハンマー。


カッコいい!!

スターリンが死んだので「鋼鉄の男」二代目となったスーパーマン*1は、科学者レックス・ルーサーやらを擁するアメリカの妨害にも負けず精力的に活動、事故からの救助活動だけでなく政治面にも手を伸ばし、「ここでは皆が傘を持っていない限り、急な雨に降られることがない」との名言を残す。


しかし彼を良く思わない部下たちやアメリカの援助によりレジスタンスが活動していた! なかでも子供のころソビエトの秘密警察に両親を殺されたある男は、蝙蝠の衣装を着てレジスタンスの精神的支柱となる*2

ロシア帽がイカス!


またアメリカのレックス・ルーサーは墜落したUFOを調査し、そこにあったパワーリングの解析と複製に成功、打倒スーパーマンのためハル・ジョーダン大佐にグリーン・ランタン軍団を結成させる*3


たくさんいるのでカマセ!


いろいろあって「地球人でもないくせに、俺たちを自分の自由にしようなんて何様のつもりなんだ?」「いっそ全世界を瓶詰めにしてみたらどうだ?」などとレックス・ルーサーの口攻めを受けたスーパーマンは、パートナーだったブレイニアックが突如豹変し作動させた時限爆弾を抱えて宇宙に飛び去り自爆する。めでたしめでたし。
……とはならない。最後はものすごいオチがつく(後述)。


というわけで、なんだ。「お腹がすいてどうしようもない人にごはんをあげるのが真の正義」というやなせたかしの言葉を知るはずもない作者だけれど、「皆が飢えることのない世界」をスーパーマンが実力で実現させようとしたら案外それなりにうまくいった話。単純にどちらを善悪ということもできない。
あとスーパーマンバットマンに弱いのはいつものことだなーとか、レックス・ルーサーの言葉「彼がやってくるのがもし数時間ずれていれば、彼は我々の側にいて、私とも良い友人になれたろう」に微笑したり。いや結局ヴィランですからあんた。ヤング・スーパーマン? あぁ、うん……。

オチについて。
スーパーマン死後、物語は地球の覇権を握ったレックス・ルーサーについてのものになる。偉大な先祖の頭文字エルを名字にした子孫たちがいることが分かる。ここで首をひねる人もいるはずだ。なぜならスーパーマンのクリプトン星での名前こそ「カル=エル」なのだから。
大方の悪い予想通り、スーパーマンがやってきたクリプトン星とは実は未来の地球だったことが明かされ、ポッドが20世紀のウクライナに着陸して終了。


この作品とスーパーマンのもともとのお話と比べてみたとき、この作品の相違点は「スーパーマンカンザスでなくソビエトに落ちたこと」だけではない。ラスト5ページで明かされるもうひとつの相違点「クリプトン星=未来の地球」により、作品全体が影響を受け、ガラッと印象が変わる。レックス・ルーサーの非難が全て伏線として立ち上がってくる! ウォンテッドもそうだったけどラストで読書を胸糞悪くさせるの大好きだなミラーどん。これはもう"Marvel 1985"も読まなければ……!
あと合わせてこれも読んだら興味深かった。マーク・ミラーの映画スーパーマン俺ならこうする! 話。結局ホラだったらしいけど。
http://blog.livedoor.jp/hirobillyssk/archives/1242356.html


そして一緒に買ったWW2イフ漫画"Storming Paradise"が微妙にひどかったのでそのうち紹介したい! あとスキャナー欲しい。スキャナーはどこにある。
でも今読んでるのはデアデビル:ボーン・アゲイン。

*1:「鋼鉄の男」とはスターリンの名の由来でもありスーパーマンの愛称でもあるので……ダブルミーニング

*2:多分ブルース・ウェインではない

*3:つづりは"Green Lantern Corps"でコーズと一緒だけど、あまりコーズとは呼びたくない(笑)