ボブ・リー・スワガー、日本に来る!?

なんか久しぶりにスワガーサーガ読みたくなったなあ。と思い、本預け所(ブックオフともいう)に行って適当に『狩りのとき』と『ハバナの男たち』買ってきました。そういえば『ハバナの男たち』はまだ読んでいなかったのだった。そして最近S.ハンターは何か書いたのか気になってwikipedia見てみたら……今月向こうで新刊出てるンじゃン!なにこれ!
The 47th Samurai: A Bob Lee Swagger Novel (Bob Lee Swagger Novels)
何このタイトル。赤穂浪士と何か関係があるんでしょーか。amazonの商品説明ちょっと超訳してみる。

S.ハンターが1993年に書いた『極大射程』の主人公である退役した海兵隊スナイパー、ボブ・リー・スワガーが帰ってきたのはこのサムライ伝説へのオマージュ作品である。
スワガーの父がメダル・オブ・オナーを勝ち取った硫黄島の戦いで、地下壕を指揮していた日本軍将校の息子フィリップ・ヤノは、戦いのさなかに紛失した彼の父ヒデキの刀についての情報を求め、スワガーに接触してくる。そしてその刀はただの家宝などではなく、日本の歴史の中でももっとも神聖なところからの反響を思わせる国宝だということが判明する。ヤノの調査により、その刀の所有者となる名誉のためには殺人もいとわない者たちの存在が明らかになる。そして名誉と忠誠が人命よりも重きを置かれる場所日本に来たスワガーは、彼自身に似た老戦士と出会う。

ヘタレ訳だけど気にしない。
えーとこれは。「赤穂浪士の使った刀が硫黄島を最後に行方不明になり、ボブさんが日本に来る」話と理解して良いんでしょうか?親父の万能厨キャラぶりには読みながらいささか微妙なものを感じていたので、このたびのボブ復帰にはわりと嬉しさを感じなくもないです。硫黄島ブームの便乗かよとか日本の銃刀法はどうクリアするんだとかいろいろ気になるところはありますが、とりあえず期待しておきます。カバーかっこいいし原書買うかなあ。

そのうちスワガーサーガの年表でもまとめたいです。需要ないだろうけど。


あーあとザ・シューターのDVDもうすぐ出るっぽいので300と一緒にアマゾンさんに注文しました。そしてプレステージのDVDはいつ出るのかなあ、と思って検索したらエロDVDしかひっかからないでやんの。

輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6) (ハヤカワ文庫SF)(ジェイムズ・ティプトリー・Jr)

本開いたらいきなり舞台となるホステルの見取り図があって笑う。何これ本格ミステリ?しかし実のところ、それを抜いても本格っぽいのは確かだったのだ!

  • 舞台の惑星に秘められた、血塗られた過去
  • そこで起こる前代未聞の天体ショー
  • 惑星の管理官三人と、やってきた観光客たち
    • 観光客たちにはそれぞれ思惑が
      • 不治の病にかかった妹を連れた女貴族
      • 天文現象を撮ろうとするショウビズの人たち
      • 宇宙船の手違いで間違って降ろされた人たち、などなど
  • そして起こる悲劇!

みたいな。


内容はさすがティプトリー、非常に読ませるしキャラもきちんと立っているんですが、よくできた短編を連続で読ませられているようでどこか物足りない。ところどころ未回収の伏線があるのも気になるし。でもティプトリーの長編ってだけで許せる自分がいるし、ラストの叙情っぽさは普通に素晴らしいと思います。

アルベマス(フィリップ・K・ディック)

アルベマス (創元SF文庫)

アルベマス (創元SF文庫)

さて。この『アルベマス』の主人公は「SF作家フィリップ・K・ディック」とその友人ニコラスである。面白いのが現実の自分に起きたこと(ハーラン・エリスンに短編を提供したり、『高い城の男』が大きな反響を浴びたり、『流れよわが涙、と警官は言った』を書き上げたり、などなどなど……)を真面目に書きつつ、政治レベルではフィクションを展開していっていることだろう。これにより読者は奇妙な位相のズレを味わうことになる。
政治レベルでのフィクション。それはアメリカがフェリス・F・フレマント――イニシャルはFFF、数秘術を持ち出すまでもなく666である――という政治家の下で統制国家へと変貌し、次第にそれを強めていっていることである。突然の家宅捜索や警察による罠は日常茶飯事のものだし、PKDとニコラスは相互に密告しあうようにそそのかされる。

さておおむねはこんな感じである。体制への反抗と挫折、しかしかすかに見える未来への希望……なんだ自分で書いていて気づいたがまるっきりオーウェルの『1984』じゃないか。しかしこれ自体はディストピア小説のお約束といってもいいだろう。問題なのは本書で展開されストーリーの軸ともなる異様な神学である。一言でいうと、「人口衛星から『神』が選ばれた者たちにメッセージを送る」。何じゃそりゃ。とにかく『ヴァリス』と『聖なる侵入』も読まないと。


あと読んでいて同じくPKDの『暗闇のスキャナー』(おっと今は『スキャナー・ダークリー』だっけ)との共通点をかなり感じたのだが、これはむしろ『暗闇のスキャナー』も同じくディストピアを舞台としているからだろう(もっともこの作品で権力を持つのは統制国家ではなくドラッグとその売人たちなのだが)。

『WATCHMEN』映画化について

最近観た映画が三本とも原作つきだったせいか、『300』のザック・スナイダーに『ウォッチメン』はどう映画化されるのかということばかり考えている。かの作品のストーリーは冷戦構造があってこそであるため、時代設定や背景などそのまま映画化するのは恐らく無理な話だろう。いや良いかもしれないが、僕のような冷戦を知らない世代が観て楽しめるものとなるかは疑問である。ならば時代を現代に近づけてしまえばいい。そこでまず思い起こされるのが今年見た映画の三本目、『ザ・シューター 極大射程』である。

『極大射程』から『ザ・シューター 極大射程』へ

ザ・シューター 極大射程』の時代設定は原作でのベトナム戦争後から現代へと変わり、主人公もエチオピア帰りのスナイパーへとなっている。現実にリンクする台詞や現代的な設定なども加わり、よりストーリーは現実味のあるものと変化している。もっともこの映画の場合はかなり詰め込みすぎ、はしょり過ぎ感は否めない(もっとも個人的な評価を問われるならば、この映画には隠れた佳作との評価を下さざるを得ないだろう。僕はワンマンアーミーや「スーパーで買えるもので軍隊を撃退する方法」が好き過ぎる)。
では『ウォッチメン』も『極大射程』が『ザ・シューター 極大射程』になったように、ただ単純に時代を現代へと移すだけで映画化が完了するのだろうか。答えは否である。二つの超大国の対立はそのストーリーの奥深くに根ざしており、一国にパワーが集中した現代では、かの作品での陰謀は全く非合理的である(なんども撮影が頓挫したのもそれが理由だろう)。どうすればいいんだ。

虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

というわけで『虐殺器官』。一読して「ああ、これは近未来版『ウォッチメン』なんだなあ」と感じた。世界中で民族虐殺を主導していく男とその動機を追う特殊部隊員、そしてヒーロー狩りの首謀者を追う孤独なマスクドヴィジランテがかなり重なって見える(双方とも母にトラウマ持ち!)のもさりながら、追われる男の目指すものが重なりすぎている。重なっているというのは当然重なっていないところもあるわけで(ああもういいや。『ウォッチメン』も『虐殺器官』もネタバレしちまおう)。

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