言語の話

こんばんは。今日は天気がよかったので言語の話をします。本の話は少しだけ。

ラテン語

もはや誰も使っていないかのように思えるラテン語ですが、かじってみると結構面白いところがあったりします。具体例を挙げると、「この言語は主語を必要としない」。というと、名詞の存在しない言語を創作したボルヘスの短編「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」を思い出しますが、なにもそんな難しい話じゃない。ただ単に、「動詞の語尾変化で主語を表現することができる」ということです。
動詞の語尾変化。例えば英語の場合、主語が三人称単数で時制が現在形のときのみ動詞末尾にsをつけます。ドイツ語の場合は――面倒くさいので活用表を作りました。活用してください。

主語の種類 単数 複数
一人称 -e -en
二人称 -st -t
三人称 -t -en

ちなみに、動詞原型は-enで終わり、活用の際は動詞語幹+活用語尾というかたちになります。
そしてラテン語の場合はこの6パターンがすべて異なるため、わざわざ主語となるような単語を使わなくても一単語で行為者が誰なのか分かるし、現にそのように使われていたということです。かなり頭がいいような気がしましたが、よくよく考えてみると全部覚えるのはめんどくさ過ぎるし廃れたのも納得かなあ、と。派生語で語尾変化がなくなっていったのはむしろ単純化とかそういう話なんだろうけど。

ドイツ語

ドイツ語の話が出てきたので、あまり関係ないことだけど少し。
文献を読んでいて実感するのが、いわゆる「ドイツ語の造語能力の高さ」ってやつ。Aという語とBという語の二つをくっつけたいとき、英語だとA of Bとかやらないといけないのに、ドイツ語だとAsBとかABでできてしまう。辞書引いて読解するのもまずいちいちバラして(そして時にはそれを部分的に再結合して)からやらなければならず、全く一苦労、というわけ。


さて、ドイツ人ミヒャエル・エンデはかつて自作『魔法のカクテル』のなかで「アコーディオン言葉」というものを作りました。このアコーディオン言葉、一体どんなものかというと「共通した部分のある単語を並べてからその共通部分を削除し、単語の列をアコーディオンのように延び縮みさせる」というものでした(「だんごりらっぱんだ」みたいな)。日本語版では「地獄+極悪+悪人+忍者+邪念+念力+リキュール→ジゴクアクニンジャネンリキュール」となっていたけれど、原語ではどうだったのか。前の話を考えてみると少し分かるような気もします。
幸運にも原語でのアコーディオン言葉がどうなっていたのか載せているブログがあったので、ちょっと貼っておきます。
http://kalauer2.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/wunschpunsch_bcfd.html
……なるほど、もともとは「望遠鏡言葉」だったのか。確かにそのほうが神秘的なイメージがあるしな。まあ、伸び縮みする望遠鏡は日本ではあまりなじみがないし、訳語としてはアコーディオンで大正解なんだろう。

魔法のカクテル

魔法のカクテル